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2006/08/20

白線秘密地帯

昨日は、以前ブログに書いた石井輝男監督の作品「白線秘密地帯」を観に渋谷のアップリンクXに行ってきました。

あらすじはコチラ(キネマ旬報のデータベース)
トルコ温泉で起きた従業員の娘さんの殺人事件をきっかけに、宇津井健さん扮する刑事が秘密売春組織に切り込んでいくというお話です。売春防止法が発効した1958年封切の映画なので、タイムリーな話題を取り上げているわけだ。で、白線地帯という言葉はググってみたら本当に使われていた模様。参議院の議事録で、宮城タマヨ議員が国務大臣の神田博君に説明しております。

この作品はかなり欠損部分があるそうで、途中で話がポーンと飛んでしまって、秘密売春組織のつながりがどうなっているのかが分かりづらくなってしまっているのがちとつらかったですが、これ以降「黒線」「黄線」「セクシー」とつながって行くラインシリーズの最初の作品を観ることができた!ということで良しとしましょう。
宇津井さんが殺人事件をきっかけに秘密組織に迫っていくサスペンスな部分や、洲崎・町屋・三河島と東京の下町が出てくるところは、この作品より前に撮った「肉体女優殺し 5人の殺人者」と同じ展開ですね。で、秘密売春組織・秘密売春組織の会員が使う秘密のチケットはラインシリーズにもでてきます。とすると、この作品はラインシリーズもの以前の作品とラインシリーズの中間地点にあたる存在なのかもしれない。
※この作品の前に「女体桟橋」という作品もあって(未見)、同じように宇津井さんが売春組織に切り込んでいく話だそうなので、これも中間地点の作品になるのか?

宇津井さんは、今と変わらずまっすぐに売春組織に迫っていきます。最後の砂利場での犯人との決闘の場面がスリリングで面白かった。で、そんなまっすぐな宇津井さんでも尋問で煙に巻かれちゃうのが、トルコ温泉のナゾの従業員女性を演じる三原葉子さん。この後のラインシリーズでも見せるとぼけたかわいさがここでも全開。「んふふふ」っていう笑い方や、「んー、黙秘権使っちゃうわ」なんて台詞がキュートだっ!筑紫あけみ嬢とのキャットファイトというおまけもついています。

で、マイブームの男・天知茂さんはバーの支配人役で登場。彼はどうやら秘密売春組織とつながっているようなのですが、その部分が出てこないので(欠損部分にその件があるのに違いない。)残念!
登場場面は3つ。バーの従業員の娘さんに支配人室で「よいではないかー」状態で迫り、その子に好かれちゃったら「だから女はいやなんだ」とニヒルにタバコをふかし、(しかし、むせる!→石井輝男がやりそうな展開だ。)最後は警官に追われてピストル自殺。
このころのアマチさんはこの役もそうですが、ギャングな役が多いですな。(で、いつも副業でキャバレーとかの支配人をやっていて、別室で「よいではないかー」とやっている。)この作品のプレスシートにも「ポーカー・フェースの天知茂がギャング振りを見せ」と書いてあったし、ギャングなアマチさんが売りの時代でしょうかね。ただ、同じ1958年に撮っている「スター毒殺事件」「憲兵と幽霊」あたりから、悪いヤツに苦悩のエキスをかきまぜた役も演じ始めていて、アマチさんの役柄の変化が始まった時期でもあると思う。

そのほか、この後のラインシリーズで悪役を演じる大友純さんがここでも悪い役。で、その子分がデビューしたての菅原文太兄ぃでありました。

あと、この作品は夏真っ盛りに撮ったらしく、昔の東京の夏の光景が映っていたのが楽しかった。街角のアイスクリーム売り、女性の日傘(これは今もですが)、男性は帽子と開襟シャツ(→昔はクールビズだったじゃない!)。扇子を仰ぐ人も多数。宇津井さんも袖をまくって、汗をふきふき捜索。(その中でアマチさんだけはきっちりスーツにネクタイ。客商売の支配人やってるからか?)観にいった19日はめちゃめちゃ暑い日だったので、この夏の光景がリアルに感じられたのでありました。

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コメント

詳しい感想を拝読でき、私も見に行った気分になれました、ありがとうございます!(でも「よいではないかー」な場面はいつかぜひこの眼で見てみたいです~)

「カービン銃」で『ギャングスター現る!』なんて大々的に宣伝されちゃってましたから、コイツはこの線でしか売れないだろう、ってな思い込みが製作側にあったのかもしれませんね。いつでもどこでもまっすぐな宇津井さんと違って芸風は広いのに!(なんだか失礼)

>mamiさま
コメントありがとうございます。映画の様子を思い浮かべていただけたようで幸いです。
「よいではないかー」の時の台詞のやり取りが面白かったので、チャンネルNECOで放送してくれる日を待ちましょう~。
アマチさんの役柄、確かにプレスシートの文面から見てもこのころはギャング路線で売り込みたかったみたいですねえ。やっぱり「東海道四谷怪談」あたりがターニングポイントなんでしょうかね。

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» 石井輝男監督作品『白線秘密地帯』を観る [Art de Vivre アール・ド・ヴィーヴル]
UPLINKにて石井輝男監督の『白線秘密地帯』を観る。 前作『女体桟橋』で描いた秘密売春組織モノはこの「白線」より「地帯(ライン)」シリーズとして発展。石井輝男の新東宝時代の代表作として語られる事の多いライン・シリーズだが、... [続きを読む]

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